成長を楽しむ生き方:『勝負論ウメハラの流儀』読後感想
要領が悪いと感じている人が、どうすれば社会で居場所を作り、成長を楽しむ幸せな人生を送れるかを知れる本です。
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本記事で紹介するのは、プロゲーマー・梅原大吾さんの『勝負論 ウメハラの流儀』(小学館新書・2013年発行)です。梅原さんが勝ち続けるために考えてきた具体的な内容は本書を読んで頂くとして、読書を通して私の考えたことを中心に記事を書きます。
「要領が悪いという」祝福と呪い
私は学生時代、クラスになじめない人間でした。人気のアイドルや番組や動画の話についていけない。まったく別のところに楽しさを感じる。その当時、人は一種類しかいないと思っていたので、周りから外れた私は劣った人間だと思っていました。
しかし、地元を離れいろいろな集まりに参加することで、場所によって私の優劣も変わりました。それこそ違う星にいるんじゃないかと思うほど、多種多様な人がいることを体験したのです。
本書では、頭の良さを二つに分けています。
かつて、僕の父が言っていた言葉がある。「俺は、頭の良し悪しを2種類に分けている。ひとつは頭の回転の『速さ』、もうひとつは頭の回転の『強さ』だ」(P157抜粋)
つまり、頭の良さには種類があり活躍の場はそれぞれにあるという風に私は受け取りました。
私は、過去の経験から、要領が悪いという側面は、逆に別の能力を伸ばすための種となっていると感じていたので、共感を覚えました。
私はどちらかというと、要領の悪い、頭の回転の「強さ」を持つ人間です。そして、人気のアイドルや番組や動画の話についていける人はどちらかというと、頭の回転の「速さ」を持つ人だと考えています。
まず、「強さ」と「速さ」は次のような役割があると考えています。これは優劣ではなく、環境によって求められる役割が変わる、という私の整理です。
頭の回転の「強さ」を持つ人間で、要領が悪いと言われる人は
- 昔からある物や価値観を自分の感覚から見て作り直す。
- 新しい物や価値観を作りだす。
頭の回転の「速さ」を持つ人間で、要領がいいと言われる人は
- 今あるものを正確に複製する。
- 今の時代にあった物や価値を決める。
あと完全に頭の回転の強さだけを持つ人は少ないと思います。グラデーションがあるし、多少は変化します。
私の場合をもっと詳しく絞ると、ある特定の枠組みが決まった中で、自分の感覚で構造を考えることを得意としています。
幼少期では、真っ白い紙を渡されて木を自由に書いてくださいと言われたときは、どうしようかとアタフタして周りを見渡しても、しっくりせず呆けていました。だけど先生の「地下に秘密基地を書いてみたらどうか」と言われ私の中でしっくりきたら、ずっと誰よりも詳細に地下の秘密基地を書いていました。
このような積み重ねで、要領の悪さが自分を納得させる目標や枠組みを決めることの習慣に繋がっていました。その習慣で、元からあった物事を俯瞰的に見る力や、より感覚的に物事をイメージする癖が伸びてきたことを実感しています。
本サイト「雪語舎」も私の要領の悪さでできていると言っても過言ではありません。
勝敗以外の物差し「成長の楽しさ」
本書では、頭の回転の「強さ」を持った人が勝負で勝つにはどうすれば良いかを分かりやすい言葉で解説しています。その中でも一番共感したのは次の一文です。
最終的な到達点は、自分が自分に対して行う評価が、自分自身のモチベーションになることだ。その世界にいる自分にとって、何を「勝ち」と定義するかなのだ。(P48抜粋)
私は、子供の時から周りの人を気にして正しさは何かをひたすらに考えてきました。悪く出ればその場にいるだけで何もしないやつ。よく出れば黙って自分が正しいと思うことをする人。人間関係は場面ごとにとても極端で、好かれる人には好かれ、嫌われる人には嫌われます。
そんな私ですが、自分が納得できる社会に貢献できる自分の姿を決めて、そこに向かって努力し自己評価することで、自信をもって行動できるようになりました。根治ではありませんが、社会との摩擦も少なくなってきています。
梅原さんは成長する楽しさを軸とした幸福な生き方を具体的に本書で示してくれています。
続けることができないと悩んでいる方は、勝ち負け以外で自分が大事にしている部分を探ると突破口が見えるかもしれません。自分の能力を伸ばそうとする行動が、自分を許せる、つまり居場所を社会に作る最低条件だと考えています。
勇気には覚悟が必要
私が思う不幸の原因は、皆が既に幸せを持っているのに、それを押し通す勇気が足りないことだと考えています。
著者の梅原さんは一時的に格闘ゲームから離れて、麻雀でプロを目指して、介護の職についていらっしゃいました。そして本書でも書いてある通り何かしら行動すれば、必ず得られるものがあります。
どんな分野、どんな種目であろうと、その時の自分が心から取り組みたいと願い、思考を重ねて成長しようとしてきたのであれば、(中略)必ずその後に結びつく何かを得ているといえる。(P91)
幸せに向かって行動して分析して評価して行動を変える。
よく言われるPDCAサイクルを回すことが成功の道。
ただ分かっているけど行動できない。
それはなぜか、私の今の結論としては、死について考えていないこと、自分との対話が足りていないことが原因だと思います。
なぜ行動するために死について考えるかというと、自分を正しく判断することが恐怖を伴い、行動できなくなる原因だと考えているためです。
自分の弱さ・限界を認め、行動を変えることは、昔なら集団から弱者とみなされ不利な立場にされて死ぬ確率が上がる恐ろしいことでした。自分の弱さを定期的に確認する覚悟がないと、本当にPDCAを回すことはできません。
覚悟をもって行ったとしても、時代が悪ければ日の目を見られません。日の目を見なくても、死んでも取り組みたいと思えることを自分に問い見つけ出すことが、後悔のない人生の鍵だと思います。
では、覚悟を決めるために、死んでも取り組みたいことを見つけるにはどうすれば良いか。私は、その時の最善と思うことに、たとえ遠回りだとしても一生懸命に挑戦していくことが大切だと感じています。
体を説得して無理なく行動するためには、五感で感じた経験が必要だと私は実体験を通して学びました。
感覚としては、「先に進むために高いところから飛び降りるなら、すべての出口が閉まっているかどうかを、実際にドアノブを掴んで回し、ガチャガチャと念入りに押したり引いたりして確かめる」イメージです。そんな確認をしてからじゃないと、飛ぶ決意が整わないのと近いと感じています。
私も随分と遠回りしましたが、憧れとのギャップにめげながらでも少しずつ進めるようになりました。結局の所、私のように頭の回転の「強さ」を主に持つ人は感覚を信じることが日々の充足に繋がると感じています。
おわりに
最上は心を入れて取り組むことですが、私は何となくでも行動していた過去を責めすぎないことが大切だと思っています。それは、どんなに間違っても自分の中で一番大切な価値に背くことはできないという確信があるということ。その場の判断は、どんなに拙い判断でもその時の最善の判断であるためです。
そう考えると何歳からでも遅くはありません。なぜなら人生に起きた全ては、成長するために必要なことだと私は捉えるからです。今気づけば今がその時だったのです。本書は私にとって後悔の少ない人生を歩むために傍に置いておきたい本となりました。
あなたは、この本を通して自分の中にどれだけ頭の回転の「強さ」と「速さ」を感じ、どんな役割に気づいたでしょうか。
